【REVIEWS】Halsey – Badlands 〜新世代のカリスマ、ここに登場〜
Released: 8/28/2015 – Astralwerks
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様々なジャンルの音楽が次々と溢れ、零れ落ちていく2010年代。まさに混沌ともいうべきこの時代に、産まれるべくして現れた寵児だ。米ニュージャージー州ワシントン出身の20歳。デビュー前からYoutubeでカバーを披露し、その圧倒的な超えの存在感と佇まいで一気に凄まじき話題となっていたAshley Nicolette Frangipaneが、このHalseyとして遂にデビューを果たす。「私は、ホールジー。私は何も特別な存在ではないわ、ただ正直なだけ。セックスと悲しいことを歌にするの」 という発言からも分かる通りガツガツとしたスタンスでもなく、そしてこれまで人物を比喩して使われてきた「等身大」 とも異なる、まさに新世代なのだ。
アフリカ系アメリカ人の父と白人の母の下に生まれ、父からはThe Notorious B.I.G.、Slick Rick、 Bone Thugs-n-Harmony、2Pacといったヒップホップを聴かされると同時に、母が聴いていたThe Cure、The Cranberries、Nirvana、Alanis Morissetteといったロック/ポップスからの影響を受けていたと公言している通り、ずばりそのアーティストからの影響が随所に滲み出る。ヒップホップ要素の強いビートの強いトラックに讃美歌調のコーラスワーク。そこに退廃的な世界観をミックスさせた “Castle”。アンニュイで気怠い唄い方がクールさを醸し出す “Hold Me Down” や “Drive” 等、M.I.A.やLady GaGaといったアイコンに比べると、よりドープでアンビエントな要素を持った楽曲が多いのが彼女らしい。しかしそれだけにはとどまらず、80’sシンセの持つ冷涼感あるサウンドスケープとアンセミックなコーラスワークで徐々に起伏をつけていく “Haunting”。まさにAlanis Morisette的な歌唱法とささくれ立ったポップネスを披露した “Roman Holiday” や “Coming Down”。そして今作で最もマス向けなメロディーを持ちながら、精神世界を行き来する様な浮遊感が心地よい “Colors”。そして新たにこの新作に合わせて日本人はニヤリとする様な内容でMVが録り直された “Ghost” では、彼女の魅力が全て詰まった、退廃的で満たされる事のない心情を表現した歌詞と世界観に胸掻き毟られる。
上記のMVでお分かりの通り、日本を愛している彼女の生の声を聴ける日も近いだろう。是非ともこの新たな音の波に体を委ね、その時を待ちたくなる素晴らしい一枚だ。
テキスト:Yuji Kamada