【REVIEWS】The Wonder Years – No Closer To Heaven 〜ポップパンクを通して手に入れたエモーション〜
Released: 9/5/2015 – KICK ROCK INVASION / Hopeless
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最早説明不要。The Story So Farと共にポップパンクの最前線を走ってきた彼等は、この5枚目の最新作でいよいよネクストフェイズへと到達した。そう感じざるを得ない素晴らしい作品をここに産み出した。プロデューサーは現在所属しているHopelessからリリースされたここ二作と同じくSteve Evettsが手掛けており、プロダクション面では大きな変化こそないものの、これまで苦悩や葛藤を叩き付けるようなポップパンクから、よりエモーショナルにオルタナティヴな世界観を確立した。
リリックの面でも影響を受けたと語るThe Early Novemberの最新作を彷彿とさせる深遠なオープニングトラック “Brothers &”。The Get Up Kidsを想起させる温かなフレーズからどんどんと熱を帯びていく、MVで先行公開された “Cardinals”。喪失感の強いメロディーラインからから徐々にスケール感を持ち展開していく “A Song For Patsy Cline”。そして4曲目にしてようやくこれまでのThe Wonder Yeasらしい疾走感あるポップパンク楽曲 “I Don’t Like Who I Was Then” へ。今作から二本目のMVとして公開された “Cigarettes & Saints” で再びエモーションが炸裂しまくるバラードをはさみ、“The Bluest Things on Earth” で疾走。その他にも心地よい疾走感のある “I Wanted So Badly to be Brave” が収録されているが、正直疾走感がどうなどという話でこの作品を評価したくない。「愛するものの喪失」 というテーマのもとでもがき苦しむSoupyの存在感をさらに引き立てる様なサウンドスケープを持った楽曲達は、もうポップパンクでもなんでもなく、現代の「エモ」として語られるべき。BGMとして聴く分にも素晴らしい作品ではあるが、どこかでゆっくりと大切に向き合い、噛み締めたくなる一枚だ。
テキスト: Yuji Kamada