【FEATURES】There For Tomorrow, Newアルバム「Nightscape」インタビュー
エモーショナル&メロディアスなオルタナティブサウンドで本国U.S.はもちろん、ヨーロッパやここ日本でも根強い人気を誇るThere For Tomorrow。世界中のキッズを心酔させた前作「The Verge」のリリースから約3年の時を経て、いよいよ新作となるEP「Nightscape」が完成した。デビュー当初から在籍していたHopeless Recordsを離れ、セルフ・プロデュースで制作された「Nightscape」の制作秘話から3年間のバンドの歩みまで、Vo.のMaika Maileにたっぷりと語ってもらった。
“There For Tomorrowのサウンドに新たなテイストを取り入れて行くのはすごく楽しいことだったね”
──「Nightscape」は、There For Tomorrow にとって3年ぶりのリリースとなります。完成してみて、手ごたえなど聞かせてください。
Maika Maile (以下Maika):とても満足しているよ。CDをリリースすると、自分が感じてきたことをみんなと共有できるから、いつも身震いするほどワクワクするんだ。僕の人生の中で一番、感情を解放できる瞬間なんだよ。
──この3年を振り返ってみていかがですか。
Maika:メンバーはみんな、自分の人生を見つめなおすことに集中していたんだ。僕個人は、音楽制作やプロダクションに深く携わっていた。プロデュース業をしたり、TVや映画CMの楽曲制作をしたり、来る日も来る日もLAで作業をしていた。音楽を作るのが大好きだ、って改めて感じたし、ギターやピアノ、ヴォーカルのスキルを成長させることにも繋がったよ。
──あなた方はHopeless Recordsを離れ、「Nightscape」はセルフ・リリースとなります。レーベルを離れたことは、バンドにどう影響を与えていますか?
Maika:僕たちはHopeless Recordsも、そこにいるみんなも大好きなんだ。There For Tomorrowがまだ初期の段階で目をかけてくれ、僕たちの成長を強力にサポートしてくれたからこそ、MTVU Woodie Awardを受賞するまでに至ったんだよ。だけどこのEPと僕たちの未来について考えたときに、そう言った環境から離れ、自分たち自身でやってみよう、と言う結論に至ったんだ。僕らが歩んできた道のりのなかで、ファンのみんなとの固い絆を結ぶことが出来たと感じているから、バンドから直接彼らの元へ音楽が届くように、セルフ・リリースと言う形が一番適していると思ったんだ。There For Tomorrowが成長した結果、こうして音源を発表できるのはすごく嬉しい。僕らは、「Pages EP」を2008年にセルフ・リリースしてから本格的に歩み始めたバンドだから、原点に帰るような感覚だね。
──2011年までは毎年コンスタントに作品をリリースしていましたが、今回、3年と言う時間があいたのはなぜでしょうか。
Maika:8年間、ツアーや楽曲制作で絶え間なく動いていたせいか、自分自身や世間から離れてしまっているような感覚になったんだ。23歳のときにヨーロッパツアーに行って、そのとき置かれていた環境や現実と衝突してしまった。僕がそうだと気付く前に、すっかり大人になってしまっていたんだよ。それに、「The Verge」の発売以降もずっと曲を書いていたけど、大きな壁にぶつかってしまったんだ。アーティストはみんな必ず、自分のやりたいことと現実が乖離していった時の苦しみを味わうと思うんだけどね。でも今は、曲を作ることに対しても、ソングライティングの能力にも、新たな情熱が湧きあがってきたと感じているよ。
──今回、セルフ・プロデュースと言う形を取った理由を教えてください。
Maika:僕たちのチームにいる人たちはみんな、僕自身がプロデュースできるはずだよ、とずっと言ってくれていたんだ。でもそれって賭けだと思ったし、まずはベストなものを学びたかった。これまでJames WisnerやDavid Bendeth、Elvis Basketteたちに作品に携わってもらうことができて、本当に良かったと思ってる。その経験によって、世界で最も優秀な人たちの仕事ぶりを見ることが出来たからね。そして2013年にChrisと僕が曲作りを始めたころ、There For Tomorrowを象徴する確かなサウンドが生まれて行ったんだ。そして、それこそが正しい形と思った。すべて実験的な状態だったけど、自分たちでトライしてみよう、と言う気持ちになったんだよ。
──今作はコーラスやプロダクション、ヴォーカルワークなどすべての面において、よりドラマティックで幻想的なサウンドを前面に押し出しているように感じました。
Maika:まさにその通り。美しい雰囲気や、アンビエントな音像を取り入れて行きたいと思っていたからね。聴いてくれる人たちが未来を感じるのと同時に、60年代~70年代の音楽のエッセンスにも気づいてくれたら嬉しいな。今回のアルバムには、僕らが今まであまり取り入れてこなかったヒップホップやソウル、R&B、ファンクと言った要素も含まれているよ。年齢を重ねるにつれて僕自身の感覚も成長し、幅広くなったから、There For Tomorrowのサウンドに新たなテイストを取り入れて行くのはすごく楽しいことだったね。
──「Nightscape」というEPのタイトルや “Dark Purple Sky”、”Racing Blood” と言った曲名からも、‘夜’を連想させる作品になっていますよね。
Maika:楽曲制作やミキシングの段階でも、なぜか作った楽曲たちが、夜、ドライヴする時に聴くようなサウンドトラックを連想させたんだ。意図したことじゃなかったから、不思議なんだけど。本来タイトルは「Night Shift」になるはずだったんだけど、ある日僕の彼女が「Nightscapeはどう?」と言ってきて、それがしっくり来てね。だから、このアルバムはすべて僕たちのアイディアから生まれたんだ!と言えないことにちょっと罪悪感があるけど、まあ、いいかな……。
──歌詞にはMaikaの様々な経験が反映されているそうですね。今回のEPでは、主にどのようなことにフォーカスして歌詞を書いたのでしょうか。
Maika:どの曲もとてもパーソナルだし、この3年間で起こったことがすべて反映されているよ。頭がおかしくなりそうになったことから失恋、恋に落ちたこと、飲みすぎたこと、自分自身を再発見したこと、すべてはうまくいくと悟ったこと、何もかも一瞬で無くなってしまうと感じたこと、とかね。歌詞は幅広い感情が込められているけど、ファンのみんなはそう言った正直な気持ちを聴きたいと思うんだ。
──上記も踏まえ、特に印象に残っている曲があれば教えてください。
Maika:”Tomb” が一番グッとくるかな。この曲は人生で初めて長い間、精神的に参ってしまった自分を受け入れる内容なんだ。絶望とどのように向き合い、どうやってそこに身をさらさずふるまうか、についての曲だよ。この曲でそんな感情を発散させることが出来たから、今はもうすっかり立ち直れたんだ。
──今作はEPとなりましたが、アルバムの構想などもあるのでしょうか。
Maika:物理的にすぐは厳しいかもしれないけど、もちろん、すぐにでもリリースしたいと言う気持ちだよ!僕自身が内に秘めていることや、自分の新たな面をソロプロジェクトでも見せて行きたいと思っているんだ。There For Tomorrowのリードシンガー、と言う僕は知ってもらえたと思うから、今度はMaika Maileと言う人物を知ってもらおうかな、と思ってね。それがきっと、今後のThere For Tomorrowの曲にも反映されていくはずだよ。
──最後に来日してから2年がたちます。アルバムを心待ちにしている日本のファンに一言、メッセージを頂けますか?
Maika:初めて日本に行ったとき、ファンのみんなの情熱や、常にサポートしてくれる姿勢を見て、すごく驚いたんだ。心から僕らを支えてくれ、愛してくれる日本のTFTファミリーのみんなは、僕らの心の中でもとても大きな存在だよ!
Interview / Translation: Leyna Miyakawa