【REVIEWS】Enter Shikari – The Mindsweep 〜 最先端アグレッションを身に纏い、立てられた中指 〜
Released: 1/14/2015 – Hostess
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やはり凄い、圧倒的にセンスフル。Attack Attack! 以降、USポストハードコア界隈で巻き起こった空前のエレクトロブームもようやくここ数ヶ月で落ち着きを見せてきた感はあるが、UK産らしく、そんなブームとは全く別軸で進化し続けてきた彼等の4thフル作。必然とも言える前作「A Flash Flood of Colour」での、Dubstepを始めたとした最先端エレクトロサウンドの導入。それを完了させた後だっただけに今作はもうEDMを前面に押し出すしかないのでは、と言われていたがやはり彼等は賢い。これまでそういった下馬評も含めて全て打ち破り、説得力を増してきた彼等は今作でその地位を完全に確立するだろう。
今作は勿論これまでのバンドの要素を踏襲しているのだが、初期から全開だったアグレッシヴさと最先端エレクトロに融合に加え、アダルトで大衆性のあるポップネス感まで混ぜ込む事に成功。感情を叩き付けた冒頭からから一転、キャッチーな展開になる“The Last Garrison” 辺りがその象徴ともいえる楽曲だが、その他にもRadioheadばりの繊細なパートから一気にバーストする “Myopia”。Museを彼等なりに解釈し、扇動的なサウンドを混ぜ込んだ様な “Torn Apart”。完全なピアノの弾き語りかと思いきや、ラストは壮大に展開していく “Dear Future Historians…” といった新機軸もあり。そして個人的にフェイバリットである、爆走するパートから一気にエモーショナルでスケール感のあるサビへ展開する “The One True Colour” や、不協和音を撒き散らしながらカオティックに狂いまくる “There’s A Price On Your Head”、レイヴコア感とデジタルハードコア感満載に炸裂する “Slipshod” といった、大爆発曲が何よりも凄まじい。
紛れもなくエレクトロ要素は彼等の武器である事に異論は無いのだが、彼等はそこに依存する事無く自分達の先へ、リスナーの先へ行こうとする姿勢が何より魅力的だ。テンプレ化されたサウンドしか作り出せないバンドよりも、何が来るか分からないドキドキ感をこうして持たせてくれながら、結果その想像を超えて来るのは本当に凄い事だと思う。そして何よりもサウンドメイクやプロダクションが進化し、年齢を重ねていく中でもしっかりと立てる中指がある事や、叫ばずにはいられないハードコアの根幹を未だ失わないそのアティテュードに、世界は魅了され続けているのだろう。
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テキスト:Yuji Kamada