【FEATURES】Unearth来日インタビュー 〜これまでのサウンドから確実に進化したものになった〜
USはマサチューセッツ出身のメタルコアバンドUnearthが2015年3月、ニューアルバム「Watchers Of Rule」を引っさげ約4年ぶりとなる来日を果たした。今回は、国内外の実力派バンドのみを集めた「Extreme Showcase Tour vol.2」へ参戦し、名古屋・東京・大阪公演の3カ所、さらにスペシャル・ショーケースとして開催された「Extreme Showcase Special OKINAWA METAL FEST 2015
にも出演。ベテランの実力を見せつける徹頭徹尾テクニカルなパフォーマンスで、日本全国のオーディエンスをアツく盛り上げてくれた。 今回はVo.のTrevor PhippsとDr.のNick Pierceにインタビューを実施し、よりエクストリーム&メロディアスに進化を遂げたニューアルバム「Watchers Of Rules」制作の裏側に迫った。
“インターネットや携帯電話を介してすべてを監視している人たちが、現代ではとてつもなく大きな力を持っている”
──ニューアルバム「Watchers Of Rule」が2014年10月にリリースされてから約半年が経ちますが、作品に対する反応はいかがですか?
Trevor Phipps(以下Trevor):すごく良い反応を得られているよ。これまでの作品と比べてもよりエクストリームで速いサウンドになっているし、グルーヴィーなアルバムだから、ライヴでもすごく盛り上がるんだ。
──「ルールの監視者たち」という意味を持つ、アルバム・タイトルも印象的でした。
Trevor:インターネットや携帯電話を介してすべてを監視している人たちが、現代ではとてつもなく大きな力を持っている、と感じていてね。アルバムの中にはいくつかそのテーマについて書かれた曲が入っているから、“Watchers Of Rule” という楽曲が出来上がった時点で、これをこのままアルバムのタイトルにしよう、と決めたんだ。
──Unearthの作品としては初めて、Cannibal Corpse やThe Black Dahlia Murder といったバンドの作品も手がけるMark Lewisがプロデュースを務めたんですよね。
Trevor:彼は前作「Darkness In The Light」ではミックスをやってくれたんだけど、プロデュースをしてもらうのは今回が初めてだね。「Watchers Of Rule」ではプロデュースも、ミキシングも、マスタリングもすべて彼にやってもらったんだ。
──今回は、これまでと制作のプロセスが違ったそうですが。
Nick Pierce(以下Nick):そうなんだ。その部分は今回のサウンド面に、確実に影響してきていると思う。メンバーが皆バラバラの地域に住んでいることもあって、全員でスタジオに集まって制作を進めて……ということができなかったんだ。だから今作に収録されているすべての曲はコンピューターを使って 、カット&ペーストをしながら作っていった。すべてオンラインで仕上げたこともあって、それなりに時間がかかってしまったんだけど……。それでもみんながとてつもなく長い時間ドライヴしてスタジオに集まって、また次のスタジオまでしばらく時間が空いて、という普通のシチュエーションよりは、よっぽどスムーズにことが進んだと思うよ。
Trevor:Google Chatを使いながら曲作りを進めていったからね。皆でスタジオに集まって曲作りをしていくのも好きなんだけど、今回はとても効果的なやり方だったと思う。
Nick:データでやりとりをしているから出来上がったものが即目に見えるし、違うドラムフィルが欲しいとか、こんなブレイクダウンを入れたい、と思えばすぐに反映することができたからね。
──アイディアをその場で反映することができるのは大きいですね。
Trevor:確かにね。これは今回の話じゃないんだけど、「The Oncoming Storm」というアルバムに収録されている “Endless” という曲を作っているときに、最後までほとんど出来上がって、スタジオで合せてみたんだ。あるパートでドラマーがスティックを落として曲が止まってしまったんだけど、そこからアイディアが生まれて、曲の構成を変えてサビの部分をブレイクダウンパートにしたことがあってね。これはレアなケースだけど、その場で生まれた閃きや勢いを曲に盛り込んでいくのはとても重要なことだと思うよ。
──今回、制作自体にはどのくらいの時間がかかったのでしょうか?
Trevor:1年以上はかかった。スタジオに入った直後に、Nickが背中を痛めてしまってね。
Nick: 全治するまで一ヶ月もかかったから、全体が遅れてしまったんだ。
Trevor:その後にヨーロッパ・ツアーも入っていたから、Markと一緒にスタジオにいる間にヴォーカルを録る時間がなくて、その部分のレコーディングは彼の住んでいるフロリダでやったんだ。これまでのアルバムの中で、一番時間がかかったアルバムだよ。
──楽曲についても伺いたいのですが、今作は “The Swarm” や “Watchers of Rule” を始め、よりエクストリームなテイストの楽曲が多く収録されていますよね。
Trevor:そうだね。今回は、NickとBuzがメインで曲作りをしていたこともあって、これまでのサウンドから確実に進化したものになっていると思う。もちろんライヴでのパフォーマンスも常に意識しながら曲作りをしているから、どの曲を演奏しても必ず盛り上がるんじゃないかな。
──日本盤にはSlayerの “Spirit In Black” のカバーがボーナス・トラックとして収録されています。
Trevor:SlayerのJeff Hannemanが亡くなった際に、トリビュートとして彼の作った曲をカバーしようと決めたんだ。ただ “War Ensemble” や “Reign In Blood” といった有名曲のカバーはみんながやっているから、それならあまりカバーされたことのない楽曲をやってみよう、という話になってね。 音的にも、今回のアルバムにすごく合っていると思ったから、この曲のカバーを収録したんだよ。
──UnearthはこれまでDownload FestivalやMayhem Festival、 Ozzfestと、様々なビッグフェスに出演されています。特に印象に残ったフェスやショウがあれば、教えていただけますか?
Nick:一つには絞れないんだけど、Heavy Montréalと、Rockaway Festivalかな。Rockaway Festivalはマレーシアで開催されるロックフェスで、SoulflyやMxPxといったバンドが出ていたんだ。ジャングルの真ん中にあるレース場で開催されるフェスなんだけど、辺り一面に虫がすごくてね。ビールをカップに入れて置いておくと、30分くらいで真っ黒になるんだよ(笑)。
──それは思い出に刻まれますね……。Trevorはいかがですか?
Trevor:2010年のDownload Festivalかな。6000人くらいのファンが集まってくれて、いくつものサークルピットができていた。「拳を挙げろ!」と叫んだら、そこにいる全員が腕を振り上げてくれて、最高の光景を見ることができた。 あとは2006年のLOUD PARKだな。
──2度目に来日された時ですね。
Trevor:そうだね。オーディエンスがあまりに激しすぎて、度肝を抜かれたのを覚えている。今回のツアーでも、再び日本のファンのアツさを感じているよ。
Interview / Translation: Leyna Miyakawa
Photo: Yuri Kometani