【FEATURES】Being As An Ocean Japan Tour 2015ライヴレポート@3/30 渋谷 Garret
叙情、激情、ポストハードコアというエクストリームミュージックの昨今を形成するにあたり主軸ともいえる要素を独自の感性でマッシュアップし、本国アメリカでの凄まじき人気は勿論、日本盤がリリースされていないにも関わらずここ日本でも確固たるファンベースを築き上げているBeing As An Oceanが初来日。残念ながらギタリスト兼クリーンパートのMichael McGoughが来日出来ず、ドラマーのConnor Denisもツアー最終日となるこの日のみ参加と、あわや来日キャンセル寸前の事態ともなっていたが、来日したメンバーの強い想いでツアーは敢行された。
この日は、北海道出身だけにあまり本州でのLiveが見られないevylockからスタート。今回、Being As An Oceanを招聘したFalling Leaves Recordsの代表Koki氏がフロントマンを務めるバンドだけに、トリ前での出演かと思っていただけに少し驚いたが、その分トップバッターにしては強烈過ぎるパフォーマンスで一気にフロアの温度は上がる。Being As An Oceanがフルメンバーで来れなかった事の謝罪をしつつ、6月にはリリース予定となるBeing As An Oceanの新作についての情報や、リベンジでの再来日を計画している事、そして久しくない自身のバンドでの新作リリースの構想等がMCで語られた。
二番手は先日The Last Placeから改名された埼玉のOwlets。Saints Never SurrenderやTakenといった叙情New Schoolの持つ疾走感と非常に妖艶なリフを持つ貯めのパート、その静と動を存分に叩きつけ、初見のオーディエンスの心を掴みまくっていたのは間違いない。
三番手は東京のちくわしなちくちくわ。インパクトあるバンド名に負けずマス/ポストロック要素の強いプログレッシヴなインストで、ボーカルレスな分アルペジオやリードギターが歌いまくり。チャグりまくるブレイクダウンも顔を覗かせたりとハードコアあがりなのは間違いないのだが、フュージョン的側面もあり、Ghost&Vodkaから昨今トレンドにもなっているAnimal As LeadersやChon辺りのファンにまでオススメしたい。ラストには前日公演で出演していたWithin The Last Wishのボーカル小松氏が飛び入りし、3way splitに収録されていた“受け継ぐ者達へ” が披露。会場は一気にヒートアップした。
トリ前は前述のFalling Leaves Records所属、昨年デビュー作をリリースした札幌の新星may silence prevail us。evylockと共に今回のツアー帯同をした新世代叙情シーンの大注目株である。オーセンティックな疾走感を基本持ちつつ、メタリックなフレーズ、ブレイクダウンやビートダウン、ボトムの太いアンサンブルは温故知新を継承しつつも、まさに最新世代だ。途中evylockボーカルKoki氏の客演や、同レーベルからリリースされている米オレゴンのIt Prevailsのカバー含め、オーディエンスのテンションはトリ前にしてかなり上がっていた。
そしていよいよラスト、Being As An Oceanが登場。転換のリハから大きな歓声が上がり、場内の期待値は高い。ドラマーConnor Denisのいなかった日はアコースティックや急遽evylockとmay silence prevail usのドラマーが数曲叩くというある種プレミアムな夜であったが、ようやくギタリスト/クリーン担当以外のメンバーがこの日集結という事で、待ちに待った一夜だったとも言えるだろう。一曲目からステージダイブが巻き起こりディスコーダントな世界観が大爆発。一曲毎にチューニングが必要になるのはギター一本ゆえ仕方ない部分ではあったが、作品の中でも多用されている深遠なフィードバックノイズを使い、それすらカバーする辺りは流石の一言だ。退廃的なリフが次々と繰り出されていく様は、まさに米アンダーグラウンドを切り取ったよう。彼等らしい世界観に疾走感とブレイクダウンを取り入れた新曲も披露され、ピットも大盛り上がりとなった。イントロのクリーントーンのアルペジオが鳴る度にパイルオン祭りと化したフロアに、スポークンワードも含め、ボーカルのJoel Quartuccioも音源以上に生々しいパフォーマンスで応えていく。本編ラスト“Dear G-d”では神々しいという言葉が相応しい、圧巻の盛り上がりとシンガロングに涙腺が緩みっぱなし。再度新作を携えフルメンバーでのLiveを見たいと思わさざるを得ない程の焦燥とエモーションが会場から溢れんばかりの一夜であった。
テキスト:Yuji Kamda
写真:tktk photography